二次元に恋し、喪のまま結婚する事無く七十数才になった俺。
近所からは「危ない老人」「キチガイ老人」と、若い頃と同じく迫害され続ける俺。訪れる人といえば、市の職員が「死んでねーか?」と来るくらい。
ある日風邪をこじらせた俺の家の玄関を、ダンダン!と叩く馬鹿がいる。
ブチ切れた俺は「誰だ!フォルァァ!」と扉を激しく開ける。

そこには50年以上前に、心の底から愛し恋い焦がれたあのキャラの姿があった。
彼女は何ら変わらぬ優しい笑顔で俺に手を差し伸べ
「お待たせ!さぁ一緒に行こっ」
震えた。涙が止まらなかった。

それから数日後、俺の家を訪ねた市の職員は、玄関先で倒れた俺を発見する。すでにこと切れていた。
警察や役所は「風邪をこじらせた独居老人の孤独死」と結論を出す。
しかし色んな孤独死を見てきた市の職員は、不思議に思っていた。
これ程の満面の笑みで亡くなった老人を彼は知らない。
最後の最後でこの孤独な老人に、一体どんな奇跡が起きたのだろうか。